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読売新聞:推薦盤、レコード芸術:準特選盤、ぶらあぼ:推薦盤
演奏
小倉貴久子(フォルテピアノ)
ライナーノーツより
バロック時代のチェンバロ全盛期を経て、18世紀末には、作曲家や愛好家たちは、フォルピアノという新しい時代の到来を予感させる楽器に関心が移っていきます。そして、19世紀は文化・芸術の中心にピアノ音楽が君臨する時代となるのです。
19世紀末になると、古楽の復興と共にモダン・チェンバロが製作され始めます。20世紀になると、ピアノという楽器は大きく変化していき、現代のピアノは、17世紀から基本的に姿を変えていない弦楽器や管楽器(フルートをのぞく)から大きく離れ、巨大なオールマイティーな楽器へと姿を変えました。
そして、作曲家とピアニストの分業時代に入ります。19世紀までは、作曲家は、兼ピアニストだったのです。ドビュッシーやラヴェルがパリ音楽院のピアノ科に馴染めず、作曲科に転科するエピソードはそれを象徴的に物語っているようです。
このアルバムで演奏しているエラールのピアノは、エラールが1777年に工房を設立してから創業100年を迎えた頃の楽器です。エラール社は、楽器製作者たちがチェンバロを製作していた時代から、ピアノの興隆期~全盛期を共に歩み、19世紀末にはモダン・チェンバロをも製作しています。
数々の発明をして、ピアノという楽器を近代的な楽器へ導き、リストを始め、ヴィルトゥオーゾ・ピアニストたちを支援し、時代の先頭を歩いたエラール社でしたが、19世紀末のスタインウェイ社やチッカリング社のピアノの工業製品化に反対して、20世紀には姿を消していきます。
この1874年のエラールのピアノには、そんな職人的な音色へのこだわりが感じられます。現代的なピアノに人々の関心が移ってきた時代、「管弦楽の音の魔術師」と呼ばれたラヴェルが、最も高く評価していたピアノ。それが、平行弦のエラールのピアノであったということは意義深いことだと感じます。19世紀のピアノには、それぞれのお国柄による価値観を背景にした強い個性が残されているのです。
収録した作品は、19世紀フランスで活躍した作曲家たちによる、1830年から1917年までのものです。当時のフランスの音楽界の雰囲気を感じていただけたらと願っています。(小倉貴久子)
演奏曲目
No. | 曲名 |
---|---|
1 | « 愛の夢 » ノットゥルノ第3番 S.541 1850(フランツ・リスト) |
2 | « ラ・カンパネラ » パガニーニ大練習曲集より S.141 1851改訂(フランツ・リスト) |
3 | « レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ » (ノクターン)嬰ハ短調 遺作 1830(フレデリク・フランソワ・ショパン) |
4 | ポロネーズ« 英雄 » 変イ長調 作品53 1842(フレデリク・フランソワ・ショパン) |
5 | « ジムノペディ » 第1番 1888(エリック・サティ) |
6 | « ジュ・トゥ・ヴー » (おまえが欲しい) 1900(エリック・サティ) |
7 | « 喜びの島 » 1904(クロード・ドビュッシー) |
8 | « 亡き王女のためのパヴァーヌ » 1899(モーリス・ラヴェル) |
組曲« クープランの墓 » 1914~1917(モーリス・ラヴェル) | |
9 | 前奏曲 |
10 | フーガ |
11 | フォルラーヌ |
12 | リゴードン |
13 | メヌエット |
14 | トッカータ |